とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜


内心そんな葛藤と戦いつつも、なんとか笑顔をキープした私はくるりと後ろを振り返った。

「ここから先の部屋はロイ様の許可を得た使用人しか入れないと知らないのか?」

そう言って、私を怪しそうに見つめている
のは20代後半くらいの若い男性。
腰に剣を下げている所をみると、おそらく護衛騎士なのだろう。

「も、申し訳ありません…。私、知らなくて…」

「知らないって…。ん?見かけない顔だな?新人か…?」

「は、はい。今日からシェラード公爵家の侍女になりましたローラです」

男性の言葉にコクコクと頷きつつ、「まだ不慣れなもので道に迷ってしまいました」と咄嗟に思い付いた言い訳を紡ぐ。

「…そうか。知らなかったならしょうがないが…私はルーク。ロイ様に仕える護衛騎士だ。ここから先の部屋はロイ様付きの側近か許可を得たものでないと入れないようになっている」

ルークと名乗った男性騎士はそう言い放つと私に視線を向ける。

「まぁ、今回は大目に見るから次は気をつけてくれ」

そう言う彼に対して再度「申し訳ありません」と頭を下げようとした、その瞬間。

「ルーク…彼女は私の客人だから通してくれて構わないよ?」

綺麗なテノールの声が廊下に響き渡った。