それと同時に声もハッキリと聞こえてくる。
「先ほどハリス様が声をかけられたみたいだけどね、まだ出ていらっしゃらないみたい」
「あらまぁ。でも今回の婚約ってロイ様からの求婚なんでしょう?あれは驚いたわよねぇ。しばらく邸宅内もその話でもちきりだったし」
へぇ…?シェラード家の使用人でさえ驚きだったのね。
近くに私が潜んでいることなんて知らない侍女達はそのまま、ペラペラとおしゃべりに花を咲かせていた。
「でも、ロイ様のお姿なんて私も見たことないし…」
「ほんとにね。お兄様のハリス様と、侍女長、執事長、それと一部側近くらいしかお顔を知らないって噂よ?」
「ハリス様はとてもお美しい顔をしていらっしゃるし、弟のロイ様もそれなりに見れるお姿だとは思うのだけれどね〜」
「ちまたじゃ、引き篭もり公爵だなんて呼ばれてるみたいだし…何で、使用人の前にもほとんど姿を現さないのかしら?」
「きっと、ハリス様と比べて見劣りするのが恥ずかしいんじゃない?」
最終的には、言いたい放題の侍女に私は呆れて言葉を失う。



