一瞬でも彼のスキをつければ十分勝機はある。

よし。決めた…!

私は心の中で小さくほくそ笑むと、キースに全速力で向かっていく。

「バーカ、真正面から突っ込んできたって勝てるかよ」

そんな私に対してキースが小馬鹿にしたように口を開き、剣を振り上げたその瞬間。

今だ!

私はサッと方向転換し、彼の右側に回り込んだ。

「…なっ!」

すでに剣を振り上げているキースは私の急な動きに対応しきれない。

そのスキをついて、私は彼のがら空きの横腹に剣を振り下ろしたのだった――。



「ほら、集中しないと痛い目見るって言ったろ?」

「ハァ…参った。今日は俺の負け」

小さくため息をつき、キースは闘技場の草原に腰を下ろす。

私も彼の横に腰掛け「キースはちょっと攻撃が単純すぎる所あるからね。流れが読みやすいんだよ」と声をかけた。

「…はいはい。俺はどうせ単純ですよーだ。ったく、フロイドまでシェスと同じこと言うんだからさ」

「へぇ…?シェスが?」

「そうだよ。一昨日、同じこと言われたばっか」

肩をすくめて落ち込むキースに私は、フッと笑みをこぼす。