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「キース!遅くなってゴメン」

「お!フロイド〜。待ってたぜ」

闘技場に足を踏み入れると、剣を持って1人黙々と、素振りしているキースの姿が目に入った。

「アンと話しててちょっと遅くなった。悪い」

「別に、そんな待ってないし。つか、俺もだいぶ体が温まってきた所だからタイミングとしては最高だぜ?」

そう言うと、キースは満面の笑みを浮かべる。彼のこういう所は、昔から好感が持てた。

「あれ…?そう言えば、シェスはこっちに来てないの?」

私は、キョロキョロと辺りを見回してシェスの姿を探す。

この時間帯は、わりとシェスとキースの二人が一試合している頃なのだが…。

「アイツも副団長になってから忙しいんだろ。前ほどこっちに顔見せなくなったからな」

少し寂しそうな表情を浮かべるキースにちょっとだけ胸が痛んだ。いつも明るい彼には、暗い顔は似合わない。

そう思った私は、手っ取り早くキースが元気になる手段を講ずることにした。

「そっか。まぁ、しょうがないよな。シェスも忙しいんだよ…っと!とりあえず、僕と一試合する?」

近くに置いてあった練習用の剣を手に取ると、私はニヤッと彼に向かって微笑みかける。