やっぱり、キースってモテるのね〜。

当の本人は気づいていないようだか、さっきからすれ違う度にチラチラとキースに視線を送る令嬢たちもいたし…。

騎士団に所属してるだけあって、体つきも逞しいキースは遠目からでも目立つようだ。

昔は天使みたいに可愛かったのに、いつの間にこんなに成長しちゃったのかしらね…。

なんだか、息子の成長を見守る母親のような気持ちになりながら私はクスッと笑みをこぼした。

すると。

「…ねぇ!あちらの黒のタキシードの方も素敵じゃない!?」

「まぁ…!本当だわ。どちらのご子息かしら?あちらの方は近くにパートナーの方もいらっしゃらないようですし話しかけてみましょうよ…!」

先ほどキースの噂話をしていた令嬢たちがキャッキャッと黄色い歓声をあげているのが聞こえてくる。

黒のタキシード…?

令嬢達の視線をたどり、私もなんの気無しに横目で確認してみた。

そこには、壁際に1人佇む男性。

漆黒の髪に黒のタキシードを身にまとい、シンプルな銀色の仮面をつけている。