「キース。大丈夫?緊張するわよね」

心配になった私はコソッと彼に耳打ちをする。

「…ッ。だ、大丈夫だから。フローラ、ちょっと近い」

突然、近づいた私にビックリしたのか慌てたように距離をおく彼に少しショックを受けてしまった。

騎士団にいる時は、肩を組んだりするのも当たり前でこんな風に距離感なんて感じなかったから。

やっぱり、男女という関係性になるだけで、壁ができてしまうのね。

そんな思いに駆られて。

「ごめんなさい…。気をつけるわ」

心なしか若干、声のトーンが下がってしまったのが自分でもわかってしまった。

「…どうかしたか?」

キースもそんな私の変化に気づいたようで、心配そうに声をかけてくれる。

いけない…。せっかく協力してくれてるキースに心配かけてどうするの?
それに、フローラとしてはまだ出会って数週間前程度なんだから、キースの反応が普通なのよ。

「なんでもないわ。私も仮面舞踏会は初めてで緊張しちゃったみたい」

「そっか…。俺じゃ頼りないとは思うけど、俺なりに最善は尽くすつもりだから頑張ろうぜ」

「えぇ。ありがとう。頼りにしてるわ」

キースの声かけに私は小さく微笑んだのだった--。