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「フローラお嬢様、行ってらっしゃいませ」
「えぇ。行ってくるわ。クララ、帰りは遅くなるかもしれないけれど舞踏会のことはお父様もご存知ですし、シェラード公爵も一緒ですので心配しないでね」
「はい…!お嬢様、舞踏会楽しんできてくださいね」
メイドのクララに見送られ、私はにこやかな笑みを携え、キャンベル家の馬車に乗り込んだ。
ついにこの日がやって来た。
私は緊張からゴクリと息を呑む。
そう、今日はオルレイア家主催の仮面舞踏会当日。
「ヤコブ、手はず通りオルレイア家に行く前に街の入口までお願いね…!」
「…ハァ。フローラお嬢様。今回は何事か存じませんがくれぐれも問題はダメですよ?こっちのクビが飛ぶんですから」
ヤコブはミリアの家に仕えている御者だが、昔から私とミリアを街にこっそり連れて行ってくれたり、面倒事は黙ってくれることからも、今回、ミリアに依頼をして派遣してもらったのだ。
「心配しなくても大丈夫よ。ヤコブ、あなたには迷惑かけないから」
パチンとウインクする私をげんなりとした表情で見つめるヤコブだが、なんだかんだ言いつつ私のお願いを聞いてくれる。



