とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜


「はい。かしこまりました…!コーヒーのお代わりなどありましたらお申し付けくださいね。それでは書類の準備をしてまいります」

クララの持ってきてくれたコーヒーとサンドイッチに手をつけつつ、私は仮面舞踏会について思案していた。

書類が早く終わったら午後からは、ミリアにでも声をかけて、舞踏会の情報を集めないと。

それにミリアの家にも招待状が届いてるかもしれないわね。
その時は彼女にも参加を促して協力してもらおうかな。

きっと、ミリアのことだ。
「面白そう!」と二つ返事で了承してくれるはず。

あとは、キースとアンね…。

オルレイア家主催の仮面舞踏会までの日程は2週間後。

ロイが参加の意向を示した場合、キースには最低限の振る舞いやマナーは覚えてもらわないといけない。 

ちょっと無茶な条件ではあるが、元々キースは運動神経や物覚えもいいし、2週間もあればなんとか形にはなるだろう。

「ここからが正念場ね…」

思わずポツリと言葉がこぼれた。

この仮面舞踏会が、私が婚約破棄をするための分岐点なのだと思うと少しだけ、緊張する。

今まで、戦法でも剣術でも勝ったことのないシェス…いや、ロイを果たして出し抜けるだろうか。

事が済むまでは最深の注意を払わないと。

最後のサンドイッチに手を付けながら、私は自分を鼓舞するようにギュッと拳を握ったのだった--。