****
「お嬢様、起きてください。もう10時を回ってますよ〜」
「…え!?」
部屋付きメイド、クララの声で私はベッドから飛びおきる。
部屋に掛かっている壁時計に目をやると、確かにすでに10時を回っていて、私は「嘘でしょ…」と頭を抱えた。
「フローラお嬢様がこんなお時間まで休まれているなんて…ハッ!もしかしてどこか具合が悪いですか…?」
私より少し歳下のクララは、心配そうに眉を下げ、ジッと私を見つめる。
「違うのよ。体調は大丈夫…。ただ、ちょっと疲れてたみたいね。クララ、テーブルの上に置いてある手紙を出しておいてもらっていいかしら?あと、眠気覚ましにコーヒーをお願い」
「はい、お嬢様。すぐにお持ちいたします」
私の返答にホッとした様子でクララは、テーブルに置いてある手紙を持ち、軽く会釈をすると私の部屋を足早に出ていった。
そんな彼女の姿を見送った私は、ベッドを離れ、ソファに腰を下ろす。
いつもならとっくに目を覚まして、書類にでも目を通している時間帯。
最近、考え事が多すぎて脳が疲れているせいだ。



