「とりあえず、キース連れて行って相手に紹介でもしてみるとかどうかしら?」

キラキラと楽しそうに目を輝かせ、作戦を考える彼女を横目に、私の脳裏には一抹の不安がよぎっていた。

キースとロイが対面しちゃったら、流石にマズいわよね…。

そうキースに"偽の恋人"を演じてもらうということは、必然的にロイ…つまり、シェスと対面してしまうことになるわけで…。

キースがロイの顔を見て、シェスだって気づかないはずないもの。
それはまた逆も然りだ。

やっぱり、キースに協力してもらうのは断ったほうがいい気がする。

そう思って、意を決して2人に話しかけようとするも。

「とりあえず、まずは服装からどうにかしないと…相手は貴族なんだから」

「貴族…!?ちょっと待てって。その前に婚約者のこととか、ちゃんと教えてくれよ」

すでに始まっている作戦会議に横槍を入れることもできず…。

私は表面上、にこやかな笑顔を浮かべつつも、内心、1人焦りを感じていたのだった――。