「…まぁ、お父様は末っ子の貴女をすごく可愛がっていたし…そろそろ婚約者がいてもおかしくない年頃ではあるし…心配だったのかしらね」


少し考えつつも、お姉様は、おっとりとした口調でそう微笑んだ。


「…お父様の気持ちはわかりますけれど、私だって急に言われれば戸惑いますし…既に婚約済みだなんて…しかも、引き篭もり公爵ですよ?どんな人かもわからないのに手紙だけで判断するなんて…」


「そうね。フローラの言い分もわかるわ。でも、ロイ・シェラード様はどうして急に貴女に婚約を申し出たのかしら…?お会いしたことはないのでしょう…?」


そう!まさに、そこなのだ。

私も一番気になっていた部分をお姉様が指摘してくれて、首を大きく縦に振る。


「…正直、わかりません。ロイ様に関して私が知っているのは引き篭もりで誰もお姿を見たことがないということだけ。だから、どこかでお会いしていたのか、すれ違ったことがあるかもわからなくて…」