キースって…女の子に対してはこんな感じなんだ。思ってたより、愛想よくできるのね。
普段、騎士団での騒がしい彼しか知らない私にとっては、意外な一面に内心感慨深い気持ちになる。
私、末っ子だけどもし、弟がいたとしたらこんな気持ちになるのかしら。
そんな思いにふけっていると。
「あら、キースじゃない?今日は非番なのに街で会うなんて珍しいじゃない……っ!?」
偶然にも、キースに向かって声をかけてきたのは私が会いたかったアンだった。
買い出しに行く途中なの、手には大きめのかごが握られている。
アンは笑顔のまま、私に視線を移し、そして…固まった。
「…アンの知り合いか?」
私の顔を見て、固まってしまったアンに対して、怪訝そうな表情を浮かべるキース。
「え、えぇ。そうなの!友達の…えっと」
しどろもどろになるアンは、私にチラチラと助け舟をだすよう視線を送ってくる。
「…フローラ」
「そう、フローラじゃない!久しぶりね〜」
ポツリと呟いた私の言葉をひろった彼女は、わざとらしく嬉しそうな声を上げ、私にハグをしてきた。



