「フローラ…、実は昨日、お前の婚約が決まった」


神妙な面持ちで、そんな重大発表をさらっと、言ってのけたのは、私の実父でキャンベル公爵家現当主のセドリック・キャンベルだ。


「…は?お父様、今なんておっしゃいました??」


あまりにも、唐突な申し出に私、フローラ・キャンベルは目を見開く。


昨日、婚約が決まったですって…??


状況がうまく飲み込めず、当主である父の手前、淑女の笑みを浮かべるも、段々と笑顔が引きつっていくのがわかった。


確かに、ここに来るまで、おかしいとは思っていた。


だって、こんな早朝から父が私だけを呼び出すなんて今までなかったから。


「…まぁ、急な展開だし、お前が驚くのも無理はない。しかし、フローラ、お前も今年17歳だ!一番上の姉も、二番目の姉もお前と同じ年の頃には、既に婚約が決まっていたし…父親としては心配で…」


そう言いつつもチラッと、私の様子を伺う父に思わずため息が溢れそうになる。