「気分はどうですか? 凛々彩」
薄気味悪いにやりとした表情。
シェリアとシェイナの忠告は,本当にそのまま当たっていた。
ぎりりと音を立てる壁に背を預けるダーレンは,固くも柔らかくもなさそうな丸パンと水を片手にしている。
私は一度めを閉じて,開ける。
そのまま片手を下ろして目も向けず,だらりと力を抜いた。
直前まで寝ていたのもあって,理想の脱力具合にほっとする。
以前であれば,激昂するダーレンに殴り飛ばされたかもしれないけれど。
今ならやはり
「良さそうで安心しました」
高揚するように微笑んでくる。
それでも無視をした私を覗き込むように,ダレーンは近寄ってきた。
「お腹,空いてますよね。どうぞ」
パンをちぎり,向けてくる。
受け取れと言う意味でないことくらい,すぐに検討がついた。
拒否する本能に,毛が粟立つ。
けれど生きるために,こくんと唾を飲んだ私は口を開けた。
無防備なのは怖い。
けれど,バレてはいけないと,敢えてそれは大きく口を開けた。
ダーレンの目に,滑稽に映ってくれたらいい。
柔らかくも固くもなさそうな,乾いたパン。
ただ無為に水分をすっただけで,私は恐怖から味1つ感じられなかった。
くるくると水の入ったボトルを開けるダーレン。
一挙一動見逃さないよう,私はじっとダーリンを見つめる。



