「どうして……どうして2人は夜雅の側を選ぶの……?」
私を助けるのは,可哀想だからとシェリアは言った。
そんな感情を,心を持ちながら,どうして。
口にしてから,ハッとした。
2人は,場合によっては夜雅を屠ることも厭わないと言いながら,慕い,敬称までつけている。
ダーレンのように激昂されては,私に抵抗の術はない。
そう心音を大きくした私の前で,2人はけろりとしていた。
「離れる理由がないからよ。衣食住,日々の命令,これさえあれば何も考えずに生きていられる」
「ダーレンは外で拾われて,私達は教会育ちなの。器量がいいと,夜雅様に拾われてね。その恩返しとも言えるわね。イナは特に義理堅いもの」
「たった数年の幼い頃だけど,教会を出ているから,2人とも善悪の区別くらい知ってるし,ある程度の同情心も持ってるの。だからってその価値観に同感までは出来ないけどね」
「そうね,イナも私も,人殺しはおはこだもの。死のうが喚こうが,関係ないと思っちゃうわね」
2人は,夜雅とも違う2人の世界を生きている。
そうまざまざと見せつけられるような気分だった。



