喉が,がらがらと渇き,声を出さずとも枯れた声だと分かる。
そもそも,声を出せる気もしなければ,出す気力もなかった。
全身脱力し,お腹だけがどこか遠くで鳴っているような感覚がする。
でもやっぱり,何か口にしたいとは思えなかったし,ここに食べ物が無いことは分かっていた。
2回目の目覚めに,徐々にゆっくりと多数のことを思い出す。
この部屋にあるのは,私のすぐそばにある小瓶だけ。
見つめて,息を吐けば,不自然に甘美な悦びを感じた。
だめだと目を離す。
小瓶を離れた場所に退けてしまおうと手を伸ばせば,そのまま自分に寄せてしまいそうで。
私は恐怖を抱えて,自分の胸の前に抱き寄せた。
小さく丸まり,強いストレスの中目を瞑る。
今は何も考えちゃいけないんだと,空腹も誘惑にも耐えさえすれば,数日は安全だと。
言い聞かせるには,時間すら分からない部屋は狭く孤独だった。
私が小瓶を手に取ってしまうか,助け出されないままダーレンの手に堕ちるか,1週間でやって来てしまう夜雅か。
どれがタイムリミットなのか,分からない。
もう時間がないことだけは,確かなことだった。
もういっそ,このやり直しさえ"無かったこと"にしてしまった方がいいのかしら。
このままでは皆,前より不幸になってしまう……
カチカチと,時計の音さえない真っ暗な部屋。
正常な思考は,全て溶けてしまったようだった。



