本格的に,私はつくづく頭のおかしな人だと思った。
こんな人とはきっと一生分かり合えないと,背中にぞわりと悪寒が走る。
全身の細胞が,これ以上余計なことを言ってはいけないと警告した。
湿っては流れる汗に,私は呼吸を短くする。
演技なんかじゃない殺意。
逃げられたら困る,ならまだ理解できた。
余計なことを考えるな,も。
それを,自分が殺すかもしれないと言うことただ1点を中心に思考するなんて……
今まで見たこともない人種に,喉がからからと乾く。
そして早々に理解した。
だめだ,私……
この人には,どうあがいても勝てない。
怖い……
手の1つも上げられていないのに,その視線1つで肩がすくむ。
親によくして貰えなかった子供は,毎日こんな気持ちだったんだろうか。
そんな絶対的支配の前に,私は唇を震わせ,閉口した。