ガッと引っ掛かるような音を立てて,ドアが開く。



「起きたんですか。早いのか遅いのか。半日ぶりのお目覚めですね」



とっさに目を向ければ,やはり私を強引に拉致したあの男。

声,体格,瞳の色。

間違いない。

違うのは,話し方くらい。



『夜雅様,だ娘。命が惜しければな』



たった一言聞いたあの声は,思わず目を見開くほど怖かった。

この男を刺激したのは,私が夜雅について発したことだと推測する。

今は下手につつくのはよそう……

半日経ったと言うことは,今は昼。

そんな勇気もない上に,ベルトゥスだってきっと探してくれているのだから。



「ここは,どこ……?」



何か引き出せる情報が欲しい。

足手まといにはなりたくないし,逃げられるならそうしたい。

逃げられなくてもせめて,ベルトゥス達に助けを求められないか,考える必要がある。

自分から声をかけるのは,とてもリスキーなことだと分かってる。

相手は私を連れてくるだけのために,あんな手段を選ぶ男。

見た目は温和でも,中身はちっともそうじゃない。



「教えられません。万が一逃げようとしたら,私が殺してしまいかねないからです。あなたにはここで,夜雅様が来るまで待機して貰います」