目覚めると,埃の匂いがした。

薄目を開けて,傷んだ喉をひっかく。

そうして私は,ようやく自分に何が起きたのかを思い出した。

ここ,は……

恐ろしさに身を震わせ,一思いに身体を起こす。

余程固い場所に寝かせられていたようで,腰の辺りが軋むような音を立てた。

所々黒くなった,木造の建築物。

大きいか小さいかも分からないそこの1室は,取り敢えずとても狭いようで。

悪人でも収監するかのように,固いベッド1つ入るだけでぎりぎりだった。

パラパラと言う音に目を向ければ,環境の悪質具合がよく分かる。

あちこち欠けて,柱の一本でも蹴り飛ばせば今にも折れてしまいそう。

そんな方法で,捨て身に脱出を図ってもいいけれど……

自分を拐った人間が近くにいるかもしれないのに,起きたてでそんな無謀は謀れない。

そもそも,あれから私はどれくらいこの場所に……

その答えをくれたのは,たった今思い浮かべていた最悪の人物だった。