「はぁぁぁぁぁ。くそ,愛してると来たか。いっそ清々しい」

「ベルトゥス?」



項垂れて,かきあげて。



「まあ最初から分かっちゃいたよ。あんたは俺なんて1度も意識しちゃいねぇ。まだ無理だなこりゃ」



吹き出すように笑った。

諦めはしないと伝えるように,1房摘まんだ髪にまた唇を寄せる。



「びっくりさせて悪かったな,凛々彩。俺ぁちょっと外行ってくるわ」



気を使われてる。

それだけじゃないとしても,そう察するのは無理のないことだった。

ベルトゥスの,私を大切そうに見つめる瞳。

あれは,過去に何度も幸せだと感じた蘭華と,同じ種類のものだった。

私には応えられないから。

ベルトゥスの言う通りとても驚いたけど。

だけど,そんな気がしていたなんてしっくりと心に落ちた自分にはもっと驚いた。

いつからだろう。

いつからあんなに,大切に見てくれていたんだろう。