「へぇ,じゃあ凛々彩は花売りだったのか」

「そうよ。その辺りじゃ多少有名なくらいには色々扱ってたの」



保護されて,数週間。

私はベルトゥスとすっかり仲良くなっていた。

連れていかれたのは彼の組織の本拠地ではなく,緊急用だと言う小さな家。

部屋は1つしかなく,外出は彼が必要最低限のものを買いに出掛けるだけ。

1つの部屋に男の人とふたりきりで1日中と言うのは少し気が引けたけど,数日過ごしてみれば案外なれも早かった。



「ここでも何かやるか? 庭くらいならまあ,俺がいる時は出てもいい」



ベルトゥスのこういう気遣いは,とてもありがたいと思う。



「ううん,いいの。長くいるつもりがないのに植えてしまったら,枯れてしまうかもしれないでしょう?」

「それもそうだな」

「それよりベルトゥスこそいいの? 出掛けてもすぐ帰ってくるでしょう?」



ベルトゥスはいつだって女の人と一緒。

互いにWin-Winな関係で,いつも楽しく過ごしていたはずだ。