「いいか? 俺はこれから,お前の身柄を預かっていると噂をばらまく。夜雅の興味を少しでもこちらに移す為にな。その間に,俺たちは備えることが出来る」



私を渡さないまま,作戦を練ろうと言うことらしい。



「蘭華がはっきりしねぇから,こっちのが安全だと思って連れてきただけ。お前は俺が命懸けても守ってやるよ」

「どうして私に……」



命まで懸けるのは,やっぱりどうかと思う。

私にはベルトゥスに何かした記憶もない。



「そら,あいつから預かってるだけの大事な女だからだよ。やっぱ女はいい,蘭華でさえあんな風に変えちまう」



返答に困って言葉を探していると,ベルトゥスは話題を変えた。



「嬢ちゃん,蘭華があいつの土地の人間に何て呼ばれてるか知ってるか?」

「ジョーカー,でしょ?」



土地の人間だけじゃない。

組織の人間の何人かも,確かそう呼んでいた。

拐われた間際の時だって,私を捕らえていた男は蘭華をジョーカーと呼んでいたはず。