「凛々彩?」



信じられないと,蘭華は私を見る。

その気持ちだけは私も同じだった。

蘭華はこれだけ不気味な事が起きても,夜雅から私を守ろうとしている。

でも,それなら尚更私といちゃいけない。

蘭華にはこの場所を自分ごと守って貰わないといけないから。

私はいつか,自分から離れないとも誓ったけど。

あなたの安全は,第1だから。

ベルトゥスは,確かに私を悪いようにはしないと思う。

……もし自分のためだけに,私を連れていくのなら。

蘭華が渡さないなら,いい。

私はベルトゥスを見た。

全部分かってる,今覚悟を決めた。

この人なんだ,全てを握り解決に導くための光,鍵となる人は。

それさえ与えてくれるなら,私はどうなっても良い。

私は貰ったブレスレットを擦って,蘭華に抱きつく。

驚いた蘭華から身を放し,私は駆け出した。


涙が溢れる。

嬉しかったの。

ベルトゥスを前に,はっきりと私を渡さないと言ってくれたこと。

大切な休みの1日を,私に使ってくれたこと。

私の姿を可愛いと言って,キスをしてくれたこと。

ベルトゥスは心得たように私を抱き止めて,小脇に抱えた。

近くの柵を越え,どこかに飛び降りようと両足をバネのように使い,しゃがむ。



「ベルトゥス!」



驚くほど躊躇なく銃を取り出し,蘭華はベルトゥスを威嚇した。

ベルトゥスは顔だけで蘭華を見やる。



「それはいいけどよ,蘭華。お前がどこ狙おうが,俺は嬢ちゃんを盾にするぜ? 試してみるか?」



少しくらい当たっても,直ぐに治療すればなんとかなる。

だから撃てばいいのにと思いながらも,だけど。

私もベルトゥスも蘭華自身さえも。

蘭華が引き金を引くとは思っていなかった。