「じゃあ,ばいばい。綺麗なお嬢さん」
にっこりと笑った蘭華は,するすると腕をほどいて。
ひらりと振った手で,私だけを取って歩いた。
「あの……いいの? 女の子にあんな風に言っちゃって」
誰がどう見ても,突き放す雰囲気だった。
戸惑った様子の2人が,見定めるように1度に襲ってきた瞳が頭を離れない。
「まあ,名前も知らない女の子なんてどうでもいいよ。それとも……文句1つ言わなかったけど,あの子達と一緒に歩きたかった? 置いてけぼりにするかもしれないよ」
そんな訳がない。
蘭華と2人きりがいい。
ぎゅっと手に力を込めると,蘭華は私を覗き込んだ。
「……ふ,ごめんね。そんなに不安だった?」
不安とかじゃない。
ただ,嫌で。
見ていたくなくて。
「そんなに妬いてくれるとは思わなかった」
妬きモチ。
聞かれるんじゃない。
はっきりと断言されて,耳が赤くなる。
蘭華は誰のものでもないのに,こんな風に思ってしまうのがつらい。
「今日はだんまりだね,凛々彩」
誰のせいだと思ってるの。
勝手に楽しそうな蘭華が,とても悔しく思える。
肯定も否定も出来ようなこと,蘭華が言うから悪いのに。



