「あれ,蘭華さ~ん!」
ひうっと,隠れてしまいたい衝動。
若い,とは言え,私よりは年上に見えるポニーテールの女性。
隣の女の人はミディアムで,大人っぽく髪を巻いていた。
どちらも恐ろしく短い短パンで,東の土地のトップを相手にしているとは思えないほど軽々しく寄ってくる。
「お久しぶりですね! 最近見かけないから,女の子達は皆残念そうにしてますよ~!」
「こんなお店に寄ってるなんて,珍しい。連れてるのも1人だけなんですね」
言葉の節々にハートを織り混ぜる彼女達の目には,私も見慣れた光景の一部のように移っていた。
苦いものが喉に落ちる。
せっかく楽しかったのに……
目の前で腕を絡める女の子と,慣れたように振り払うこともしない蘭華。
逸らしたいのに,現実だからと逸らせない視線。
自分が分からなくなるくらい,切ない気持ちになった。
前の,蘭華なら……
無意識に比べてしまう。
自分が弱くなった証拠で,そんな自分が1番恥ずかしかった。
「悪いけど,今日は連れていけないよ。大事な女の子とのデートだからね」
「っえ?」
2人して,私を瞳に映す。
驚いた目には,瞳を揺らす驚いた私が映っていた。



