「まだ拗ねてるの?」
ざわざわと音の多い外。
照りつける太陽の下で,蘭華はその美しい顔をさらに美しく綻ばせた。
「拗ねてる訳じゃないわ」
その顔を直視できないのは,あんなことがあったばかりだから。
ただ見た目を褒められるより,ずっと蘭華が気に入ってくれたことが伝わってきた。
恥ずかしくて,でも文句があるわけでもなくて。
いつもよりずっと静かになってしまうのも,無理のないこと。
「せっかくだし,何か欲しいものある? 実際見てみないと分からないようなものも,沢山あるでしょ?」
絡めとるように繋がれた手。
戸惑う私に,逃げられないようになんて冗談めかして笑う蘭華。
その手を大きく持ち上げ,ちゅっと指の付け根にキスを落とす蘭華は,全く悪びれない。
辺りには沢山のテントに露天。
3地区の中で最も安全で繁盛したこの東の土地は,今日ものほほんと盛り上がりを見せていた。
近くで聞こえる噴水の音も,気分をすっと持ち上げるようで。
私達はたまたま1番近くにあった露天を覗いた。



