私が名案だとにこやかに答えると,蘭華は咎めるように私を見た。
「髪って……やらせたことあるの?」
私はぴくんと反応して,動きを止める。
蘭華の目には,より肯定に見えたことだと思う。
動きを止めてしまったのには,もちろん意味があった。
咄嗟の答えに,困ったから。
だって,確かに私はサムに髪結いを頼んだことがある。
とても暇だったから。
だからサムの髪結いの腕だって知っているし,今だって呼ぼうとした。
でもそれは……前世でのこと。
今世でそんなお願いはしていないし,サムの記憶にもない。
「答えられないの? 僕がいない間に,随分仲良くなったみたいだね」
私が黙ったいる間にも,誤解は加速していった。
いっそ今回も頼んでおけば良かったと思う。
それなら嘘をつくこともなく,ただ頷けば良かったのに。
髪結いくらい,隠すこともない。
なのに私が黙ってしまうから,サムとの間に疑われるような関係があるように思われてしまっている。
サムには後で,ごめんねと口裏合わせを頼まなくちゃ。
慌てる姿が目に浮かぶ。



