はっと私は意識を取り戻した。

蘭華の前で考え事なんてと,頬が染まっていく。



「っおかしなこと言わないで蘭華。着替えるから,その」

「出ていけって? 僕にそんなこと言うの,君くらいだよ」

「やめ……」


出ていくどころか近づいてくる蘭華。

私が小さく身を引くと,その手首を掴まえて



「その代わり,とびきり可愛くしてきて」



冗談か本気か,分からない艶やかな声で囁いた。

耳がぞわりとして,いいからと彼を追い出す。



「蘭華の可愛いって,どんなの……?」



それにそんな短時間で用意しろなんて,蘭華ってば割りと無茶苦茶な事を言う。

女性の扱いには,慣れてるはずなのに……

あ,そうだ,それなら。



「蘭華,蘭華。今ってサム,いる?」

「サム? どうして?」

「洋服,選んで貰おうと思って。それにサムは手先も器用でしょ? 髪の毛も結って貰いたいの」