たまに,迷うようにここの人間の中に誰かを探し。

焦るように気丈に振る舞い。

もどかしそうに,皆を見つめる。

口を閉ざして,訴えるように見てくる時がある。

庭の墓に手を合わせる凛々彩に声をかけた時。

何故その歌を知っているのかと問い詰めた,たった今。

まるで自分以外誰も知らない,大きな秘密を抱えるように,1人で生きているような顔で。

信じたいのに,心を許しそうになる程,大事に思うのに。

君を渡すほど価値のある大きな集団以外は蹴散らすほどなのに。

君は,どうして何も言おうとしない?

それだけ信用を乗せた瞳をしながら,こんな場所余裕だと,寧ろ楽しいくらいにころころ笑って過ごしながら。

本当に,凛々彩を信じてもいいのか分からなくなる。

でも,今は見逃す判断をした。

僕がそう決めた。

話さないのは,信じて貰えないからだと言った凛々彩を,見逃した。

でも,まるで問題は僕らの方にあるかのように……

僕が君を信じないと断言してしまった凛々彩が,とてももどかしく思えた。

母さんの作った,俺だけの歌。

歌詞なんて忘れてしまった,思いでの歌。

最後の最後だけは憶えてる。

ー忘れないで あいしているわー

どうしてその歌を,凛々彩が……



「蘭華さん」

「すまない,遅れた。それで? あのマイペースで勝手なベルトゥスが僕を呼んだ理由,なんだって?」