言葉を交わし,危険を承知で。
私は凛々彩の願いを聞いた。
本当は,その後は凛々彩の魂を私が貰い受けるはずであったのに。
地上で抗う凛々彩の姿を見て,考えを変えてしまった。
逆に,私を凛々彩にあげてしまう選択をした。
『還して,くれるの?』
本当に,おかしな言葉を使う。
還すもなにも,その魂はもともと神のものであると言うのに。
いや,それも違うか。
自由な私の妹が神のものであったことなど,1度もありはしない。
あの子はきっと幸せになる。
凛々彩の相手も,もうとっくに外の世界に気付いているし。
島を支配する,入れ替わりの激しい配達屋の船に紛れることなど造作もない。
気のおけるものを送り込み,パイプを太くし,交渉し。
島民はいつか迫害も差別すらも受けず広い世界に出ていく時が,きっと来る。
夜雅の言うような,ただ利用され蹂躙される未来はない。
それを見て,ようやく私はほっと息を吐く。
『誰もお前を恨んじゃおらん』
本音なのだろう,お爺様の。
こうして最期の最期で消えてしまう私さえも,あなたは許すのだろう。
消え行く私を,お爺様は子供のように撫でる。
撫でて,撫でて。
光の粒子を,最期まで,握っていた。



