いつだったか。

私がまだ数十歳の,神にはとても貴重な若者だった頃。

神は1人の神を失った。

私のせいだった。

私がまだ30の歳の離れた妹を,人間の世界へと連れて出掛けてしまったせいだった。

茶色に似た赤毛の妹は,聞き分けが悪く,明るく天真爛漫な性格をしていた。

人間の世界で祭りがあると,そろそろいいだろうと。

私が目を輝かせる彼女の手を引いた。

けれど

あちらこちらに走る彼女のせいで,いやそれを分からなかった私のせいで。

2人の兄妹は,離ればなれになった。



『僕の,僕のせいなんだ……っ』



神の世界へ戻り,あちこちの神に尋ねても,妹は見つからなかった。

神はどんな存在でも即座に見つけられる。

神は他の神をも,神の世界では見つけられる。

けれど人間の世界に降りた神を見つけることは,どの神にも無理だった。

逆に神の世界に人間が来たとするなら,その人間のことも神は見つけられない。

大人の神が探しに出てくれたけど,人間のように歩き探せど,妹は見つからなかった。