「はぁ……」



他に誰もいない空間に,重たいため息が1つ。

凛々彩の消えた場所をただひたすらに見つめていた私は,ゆっくりと振り返った。



「満足か?」



その質問に,私は応えない。

代わりに小さく笑んでやれば,私のお爺様は顔を背ける。



「そこまでする予定では無かったはずだろう。そのせいで私はお前を喪い,お前は次の生を失う」



神は寿命を終えれば,また同じ記憶と共に神へ生まれ変わる。

けれど禁忌を犯したものに,次はない。

神は万能だ。

それゆえに,最強ではない。

神も,時に滅ぶ。

お爺様を可哀想たらしめるその事実と今までの感謝にただ1つ,私は謝罪を口にした。



「すみません」

ありがとう。



神は家族だからと共にある必要など無い。

それが頭1つ飛び越えた祖父という存在なら,尚更だ。

お爺様の奥方,お婆様はとうに転生を終え,私の父母はどこか遠くにでもいることだろう。

いつでも死を選べるお爺様が今も目の前で存在しているのは,全て私を見守るためなのだ。