「あのままね,ドンと」



人差し指をこめかみに当てて,蘭華は縁起でもない暴露をした。

それをわざわざ私に聞かせるのは



「何を驚いているの? 凛々彩までいなくなるなら,それはこの世界が僕の未来と釣り合わない事になるのは当然でしょう?」

ー予想はしてたんでしょ? 凛々彩



安易に死ぬなと,私に教えつけるため。



「だめよ」



それでも唇を突きだした私の唇を,蘭華がつまむ。

うっと引っ込めれば,返事はなく蘭華が笑った。

笑い事じゃないのだけど……

蘭華も譲れない,ということなんだと思う。



「……見てないのに,浮かぶんだよ,凛々彩」



ぎゅうと抱き締められ,私は動けなくなった。



「今も,たった少し振り返るだけで。横たわって何故か笑ってしまう凛々彩が,目の前にいたような気がする」



私は何も言えず,蘭華の柔らかい髪を撫でる。

私,笑ったりしたかしら。

確か,倒れたすぐあとに蘭華が来て。

泣いてる蘭華が切なくて,悲しくて,どうにかしたあげたくて。

手を伸ばして,私に粒を落とす蘭華を見て,最期に。

涙が滲んだあと,確かに微笑んだ気が,しないでも……ない?

それはもう確かめようがないけれど。



「体験してないのに,トラウマなんだ。凛々彩は,だから……ここにいてくれないと,ダメなんだよ。サムもアンナも,寂しがる」