「ああそうだ」



蘭華は立ち上がって私を見る。

私も釣られるように立ち上がれば,蘭華はニコリと笑って言った。



「似合ってるよ,その和装。君は女の子だもんね……君に似合いそうな服を見繕って送らせるよ」



それでたまに,ここに来て。

そう瞳が語っていた。

私はこくりと頷いて,お礼を言う。

このお屋敷を出歩く分には,元より許可されている。

明日は色んな人に,挨拶をして回ろう。

私のご飯を担当してくれているアンナ。

他の組織のカイにはまだ逢えないけど,アンナには逢える。

きっと明日,毎日の食事のお礼を言いに行こう。



「部屋に送るよ,凛々彩。ここは冷えるでしょう?」



蘭華にそっとエスコートされて,私は歩き出した。

名前を呼んで貰えた。

悲しいくらいの懐かしさに,私は俯く。

離さないように,私はそう願って,蘭華の腕に添えた手に力を込めた。