それは,つまり。



「還して,くれるの?」



本当に?

間接的に,沢山の命を救ったから?



「ただし,条件がある」



条件。

一度目と,同じ。



「絶対に,死ぬときは幸せだと笑え」



何よ,それ。



「蘭華の側なら,絶対に」



そんなの簡単に決まっている。

蘭華がいて,サムがいて,アンナがいて。

たまにカイやベルトゥスが遊びに来てくれたなら。

私は幸せに決まっている。



「次はない,死んだらおしまいで,もう何一つ助けてはやらない」



おかしいのよ,神様。

ずっと1人に与えるにはおかしすぎるくらい,優しい。



「じゃあな,凛々彩。理由がないから,神である私と凛々彩は,もう二度と逢えない」

「でも,忘れないわ!」



それで充分だ,と言うように。

彼は誰よりも美しい微笑みを,その顔に浮かべた。

驚き,つい手を伸ばす。



「まっ」



神である彼は私に応え,指先に触れる寸前のところで動きを止めた。

光り輝く中で,それが,最後に見た,景色だった。