「は,は」
心音が大きくなっていった。
カウントの,始まり。
どくん,どくん,とくんと早さと音を増し,耳がじくじくと痛む。
刹那,一瞬だけ,音は全て無になった。
ーバンッッッ──────
異様に響き渡る銃声。
ぶるんと震えた私の右腕から真っ直ぐに放たれた弾。
何人かが,攻撃を止めないまま「なんだ」と私を振り返る。
狼煙のように。
白く細い煙が,上がった。
取り戻した呼吸。
詰まり,夜雅と目が合い。
彼は嗤う。
私は睨み返した。
「あそこの娘を,捕らえろ」
口の動きしか見えない。
けれど,分かった。
それどころではない蘭華とベルトゥスが,初めて私に気付く。
夜雅の言葉に,驚愕の顔を向けた。
いくつもの視線が私を向く。
私が欲しい視線は1つだけ。
冷静になって,蘭華。
このままじゃ,あなたの負けになってしまう。
私より先に,蘭華が死んでしまう。
他者に畏怖される蘭華の姿は,そんなものではないはずでしょう?!
私はスカートを破り,全力で背中を向けた。
"捕らえろ"
私は,少しくらいきっと大丈夫。



