「サム!」
サムが目を丸くして,背中を自分の身長の半分ほどに反る。
そのまま両手をつき後ろへ飛んだサムは,自分の首筋を狙っていた長い剣を持つ男の顎を1発で撃ち抜いた。
「りっ……何で!! あなたは隠れていてくれないと」
無理よ,ただ隠れているなんて私には出来ないの。
今だって,サムは相手に気付いてもいなかった。
だから,もし今私がいなかったら。
絶対に間に合わなかったじゃない。
私はふと辺りを見渡した。
人が増えている。
敵も,味方も。
両方増えている。
奥に知った顔を見て,私の瞳はきらりと光った。
「ベルトゥス!!!」
蘭華には届かない。
けれど,彼になら私の声が届く。
「蘭華を,おねがい……!」
ベルトゥスの大声には匹敵しない。
私のもとへ走ってこようとしてくれていたベルトゥスは,一瞬考えるように眉を寄せ,蘭華の方へと走った。
蘭華が背中に隠したナイフを左手で夜雅に突き刺す。
確実に狙って攻撃しているのを見て,やはり蘭華は強いのだと知った。
夜雅の瞳が私を捉える。
ニヤリと真っ直ぐに笑みを送られ,私はぞわりと背筋を震わせた。



