ばさりと音を立てて私の腕の中に落ちたブーケ。

花弁が何枚か私の髪の毛に付着して,反射で目を閉じた私は丸々とその瞳を広げた。

ドンッと隣で振動が起きる。

見ると,カイが綺麗に着地していた。

ぎゅっと飛びかかられて,花束をどうするか迷う。

首に巻き付いた身体は少年の形をしていて,私には大きく余った。

ちゅっとこめかみに軽いキスが落ちる。



「それは,あげる。リリー。じゃ,俺はまた行くから。またね」



驚きながら身体をカイに追わせ回る。

途中映ったサムは真っ赤な顔で



「カイさん,すげー,です」



とうわ言のように呟いていた。

そんなサムの肩を,カイが通りすがりにグーで強く押す。

サムの身体はぐらりと揺れた。



「だろ? パクったら容赦しねーからな,サム」



カイに塀がまた近くなって,カイは大きく跳んだ。

最後にまた私を振り返る。



「出来るだけすぐ戻ってくるよ。"雪の降る日"までに間に合えばいーんだよね? リリー」



私はこくこくと頷いた。

カイが何をしに行くのか,悟ってしまう。