「凛々彩,離れてって言ったよね。何で言うことを聞かないのかな」
狭まった眉の下の瞳が,一瞬赤色に見える。
甘く燃え揺れた瞳に囚われていると,熱のこもった吐息が聞こえた。
そして遅れて理解する。
事故でも何でもなく,自分は今,蘭華に押し倒されていた。
「自分の意思と関係なく起こるのがこんなにきついと思わなかった。だから,だから離れてって言ったのに……ッ!」
かぶり付くようなキス。
蘭華の右手が,今度は私の頭上に移動していて。
釘のように強く,拳が刺さる。
一瞬,私の頭を撫でた。
私の左手も,もう掴まれてはいなくて。
指の一本一本を奪うようにからめとられる。
何度もキスが落ちてきて,私の息まで上がってしまった。
こんなに何回も……どうしてなの……?
ちょっと,ふか……
視線が交わる。
蘭華は目を閉じて,息を吐くと
「……ごめん」
そう私の腰を全身で抱いた。
密着した身体に,熱いままの蘭華の呼吸が当たる。
太ももの感触が何なのか,また思考を働かせて。
私はようやく理解した。
それよりもと,無理やり脳内から追い出して,蘭華の言葉の意味を考える。
「あ,の……ごめんって,何の事? 蘭華。キスの事なら,私……何も嫌じゃ,ない,よ?」



