『ふざけるなよ,ベルトゥス。勝手に僕の手放してない凛々彩を拐っておいて,目を離す意味が分からない。僕に啖呵まで切って護れないなら,お前には最初から連れていく権利なんてないよ』
「蘭華にぶん殴られたのが治ってねぇだけだ。何ともねぇよ,凛々彩。寧ろ足りねぇくらいだから心配すんな」
首筋を擦るように目を伏せたベルトゥス。
私は蘭華を見上げる。
殴るのは,いなしたりするのとは違う。
蘭華が細く綺麗な素手で人を制圧するところは,見たことがなかった。
「手当て,してから帰ってね。そのままで良いのだとしても,私がやるわ」
蘭華がベルトゥスに手をあげたことまでは口を出せないけど。
その半分が私のせいであるなら,それは私の傷も同然だった。
心配かけてごめんなさいと,そっと蘭華に身を寄せる。
「……分かった。凛々彩,もし余計な記憶をつつくような事だったら悪い。だが……あんたは,自分がどんな場所にいたか知りたいか?」
「ベルトゥス!!!!!」



