「お風呂,やっぱり疲れちゃった? そう言う顔してるけど」
部屋に戻ると,蘭華は何をするでもなく。
ただベッドの端に腰かけていた。
私に気付いて,その綺麗な顔が向けられる。
ゆるい青の瞳がさらにとろんとと細まって,私の胸はきゅうと鳴った。
「ほら。おいで,凛々彩」
他の人にはしないんだろう,無防備なポーズ。
膨らんでいないポッケには,きっと拳銃一丁すら入っていない。
私は迷ったけど。
迷ったのに。
ゆっくりと近づいて,すぽんと収まった。
私が応じたどころか,正面から膝を折ったのが流石に子供っぽいと思われたのか。
蘭華は1度,私の下で目を丸くする。
抱き締めたいのに,流石にその勇気までは出なくて。
自分を支えるために,蘭華の胸に手を置かせて貰うだけにした。
蘭華が本気で私を呼んでいなかったのだとしても。
甘えていいって,皆が先に言ったんだから。
……そうでしょ? 蘭華。



