私が触れすぎたのか,もぞりと太ももの当たりを蠢く蘭華。

動きが止まったかと安心すれば……

数秒後に勢いよく顔をあげた。

頭を抱え込まれて,首がいたい。



「良かった……おはよう,凛々彩」

「お,おはよう……」

「何にも良くないよ! さあ退いて貰おうかね,蘭坊っちゃん!!」



びくりと肩を震わせる。

見ると,慌てて来てくれたと見えるアンナが私の目をばっちりと見ていた。

渋々離れた温もりに目を奪われていると,今度はアンナからの抱擁を受ける。



「ああ……っ無事,とは言いがたいけれど,凛々彩が戻ってきてくれて本当に良かった。似合わない心配でもしてるのか,うちの男どももうるさくてね。ああ,蘭坊っちゃんが少しも離さず抱えて戻ったとき,どんな心地になったことか」



ごめんなさいとアンナの背中をさすると,自分の服装が変わっていることに気が付いた。

心なしか顔回りもすっきりしている。



「桶で頭だけ洗った時も,凛々彩の服を取り替えたときも。どんな目にあったんだろうと想像するだけで恐ろしかった。凛々彩,もう心配ないんだからね」



怖かったね。

そう,アンナは私を抱き締め続けた。



「うん……」



そう答える喉が震えて,抱き締めるアンナの温もりに瞳が滲む。

えへへと笑って離れると,心配そうにしたアンナも笑ってくれた。



「ただいま,アンナ」



行ってきますと言って出たきりだったと思うと,申し訳ないと思う。



「ああ,お帰り。ここはもう,とっくに凛々彩の居場所なんだからね」



嬉しいことを言ってくれる。

私はまた,アンナに微笑んだ。