この人にだけは,溢しても良い。

私が変えようとしている未来に比べれば,へっちゃらだって,寧ろ対価なんだって。

強がり笑う必要は,ないんだ。




「っ……怖かった,もう,蘭華には逢えないって,もうだめかと思っ……」

「うん,ごめん,ごめん」



背中を引っ掻くほど強く手を回しても,蘭華は私を手離さない。

ぎゅうぎゅうとしがみついて,何の意味もないことを訴えて。

蘭華に贅沢なほどあやされた私は,少しずつ,少しずつ意識を手離した。

私が間違っていた。

彼の手を,離してはいけなかった。

こんな思いも,あんな思いも。

もう2度と,嫌なのよ。