蘭華が殺したんじゃない。

私はどうすれば何が起きるのか,分かってて,動いた。

分かってる。

西も東も南も,この島自体が,元々こうゆう場所だってこと。

自分で選んでおいてこんな気持ちになるのは,そんな卑怯な人間は私くらいしか存在しないこと。

人が死ぬことを厭う私が,人を殺してしまった。

今更ながら,心に響く。

正当防衛と言う言葉を,治安の悪い場所では度々耳にした。

子供を抱く母親と,血気だった男。

その目の前で倒れる暴漢なんて,良くある話だった。



ーダーレンは,倒れた。



ここにいるはずの他の人達は,無事なんだろうか。

元通りなんてきっと無理で,対処できる薬があるのかも分からない。

でも,彼の手を離れるのなら。

せめて誰か救われていて欲しいと,そんな逃げ道を探してしまう。

ふと,2人の姉妹を思い出した。

あの子達,この騒ぎのなかで,現れなかったな……

"敢えて"来なかったと言うことは,想像に難しくない。

ここは,そういう場所。

弱いだけの人間は,朽ちるか,他者を死に追いやるだけ。

ここは,そういう場所。

全ての現実はどれも。

何度も,同じ結論を連れてくる。

乾いた唇が,ぷちりと切れた。