貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!

足音が一際大きくなっていくのに気付く。

ハッとまた肩を揺らせば,また邪魔が入るとダーレンが離れないまま眉を寄せた。

扉から目を離せない。

お願い,誰か,開けて。

念でも飛んだのか,ピタリと部屋の前と思われる場所で足音が止む。

やはりここはとても大きな施設のようだと分かった。

ダーレンが後ろを気にしながらも,首に唇を這わせ。

ジュッっと汚い音を立てて,なんの傷も負った事がない肌を吸う。



「───……やぁっ……」



そんな私の声が掻き消えるほど。

どかりと大きな音を立てて,扉がベッドの横に落ちた。

抱き寄せるように密着したまま,ダーレンは首だけ後ろに回す。



「蘭,か……」



まだ,大きな事は何もなかったけど。

見られたくなかったと,思ってしまった。

この紅い印は,他の男が私を奪おうとした証。

だけどなのに,やっぱり来てくれたのがあなたで,嬉しいと。

そう,ごちゃまぜの感情で涙が溢れる。

ダーレンから見ても,蘭華から見ても。

涙を流しすぎた私の顔は,とてもお世辞一つ言えない顔になっているはずだ。



「お久しぶりです,蘭華。そんな顔,出来たんですね。……で,一体なんのつもりですか? 出来れば後にしてくれません?」