貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!

ぎ,と。

スプリングすらない硬い木の音。

ダーレンは大きく,私に股がっていた。

見下ろされ,見下され。

無駄と知りながら肘裏を押してみても,びくりともしない。

衣類をメインに肩にかけられた手も,離せなかった。

口を結び,目を閉じ,顔を背ける。

どんなに力を込めても,叶わなかった。

そんな私を楽しむように,少しずつ少しずつ服がずれていく。



「いっいの? わたし,ここに来てから1度も水1滴浴びてないのよ? それに,そういえば,尿意を,感じる,きもするし」



目の端の水滴をふよふよ揺らして,私はダーレンに訴えた。

尿意も何も,出るものなんて身体に残っちゃいなかったけど。

それほど私だって,必死だった。

例え秒単位でも,私をダーレンに晒し渡したくはない。

ふっと,ダーレンの唇が弧を描く。

私の発言がよほどおかしかったのか,ダーレンはふとななめ上を見て,吹き出すように笑っていた。



「どいつもこいつも変わりませんよ。……どうせ汚れるんですから。それに,尿? 便ならともかく,他の体液と一緒に飲み込んでやりますよ」



なんの,時間稼ぎにもならないことを知る。

その事実にも,ダーレンの発言にも。

重なるショックで,声が出ない。

もう2度と出なくなってしまったのかと思うような,つんのめるような喉。

私は,諦めた。

声が出なくとも,伝わればいい。



「───」