貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!

ダーレンの横をすり抜ける。

私の手を掴もうとしたダーレンの手が,さらりと空振りをして。



「……っぁ」



ダーレンは迷いなく,私の長い髪を掴んだ。

能面のような,反射で身をすくませる表情。

べっとりと張り付いているのは,憎悪に近い感じがする。

諦められない心が,右手を握らせる。

震える指は,私の涙を連れてきた。

はらり,さらり。

量を増して,壊れそうな心が追い付かない。

現実を見つめなくちゃ,何も解決できないのに。

1番危ない男の前で,その姿を確認できないでいる。

ドンッと身を投げられ,小さく声をあげながら雫を四方へ飛ばす私。

投げられた場所は,目を開けなくても分かる。

固くて粗悪な,ベッドの上だった。