ーはっ

パチリ,と私は目を開けた。

徐々に周りの騒がしさが耳に伝わってくる。

私は誰かに押さえ付けられて,顔を俯けていた。

目の前に,アスファルト。

つまりここは…

私はなんとか思考を働かせる。

バームクーヘンのように3等分された地区の内の1つ,東の土地。

さらに,覚えのあるこの状況。

誘,拐。

私は逸る胸の高鳴りを感じながら,胴体を大きく反らして顔をあげた。

私を捕らえている人が「うおっ」と声を上げて頭を離す。

申し訳ないとか,そんな状況じゃなくて。

ここは。

東の土地の,事実上の統治者,その組織の拠点。

蘭華の,お家。

良かった……

ほんとに。

戻って,来た。

それもこんなに,0から。

ありがとう。

私はまっさらな青の空に,笑顔を向けた。

蘭華のために,私は絶対死なない。

だけど死なないために,自分から離れたりはしない。

次は…蘭華を泣かせない。

大きな決意を胸に。

もう一度,大きく口角をあげた。

周りの巨漢達が怪訝そうにしている。



「ここは,蘭華率いる組織の拠点であってる?」



私は痛む肩に力を入れて,振り返った。



「あ?! あ,あぁ。知ってんじゃねぇか。ジョーカーが望んだからお前はここにいる。あの人に目をつけられた以上,助けはこねぇよ」