私は、くるりと時雨に背を向けて歩きだす。

一人で帰りながら、今日一日のことを振り返っていた。

…平静を保っていないといけないのに、揺さぶられかけるなんて。

…私は、葵のことが好きなのに。

その気持ちは、絶対変わらないはずなのに。

どうしてか、優しくされるほどにドキドキしてしまうのだ。

葵も、きっと、私を好きでいてくれている。

その気持ちに、私は応えたい。

…まぁ、葵は熱を出した時の記憶がないみたいだけどね。

寂しい気もすれば、それでよかったと思う自分がいる。

だって、葵が覚えてたら、多分今のままの関係を続けるのは苦しかっただろうから。

返って、この方が私にとっては都合がいい。

…でも、勘違いなのかな。

皆が私を見る目は、友達同士ではない気がしていた。

…気のせい、だよね?

私みたいな地味子が、そうそうイケメンズに愛されてたまるか。

必死に自らに言い聞かせながら、家へと帰った。