…時雨の心は、とっても、温かいね。

抱きしめられながら、人と人との繋がりである絆のありがたみを知った。

それからしばらくして、時雨は、何でもなかったかのように私から離れると、いつものように振る舞った。

夢か幻かと思ってしまうけど。

…でも、私の心の中には、彼の優しさが
しっかりと色を残していた。

時雨から貰ったものは、目に見えないものもあった。

「彩羽ちゃん、本当にここまででいいの?」

『うん、平気だよ』

大きな袋を抱えて、心配そうな時雨と別れる。

私、何気なくJKらしいことしちゃってるけど、“王蝶”だからね。

別に家は知られているわけだし、送ってもらえば良い話なんだけど。

今日は、一人で帰りたい気分だった。

もし万が一にでも、変な輩に絡まれたとしても、叫べば何とかなるし。

『バイバイ』

手を振って笑顔でいうと、時雨は仕方なく肩をすくめて「バイバイ、気を付けてね」と手を振り返してくれた。